死の時代
銀粉を撒き散らしたような
日差しに
べっとり肌を這う濡羽色の
夜の密度に
無数の
死のきそいが
これが羨門
ここが玄室
この窪みが納骨孔
ピントグラスに投影する
かげろうのような寶篋印塔 五輪塔
貝殻のような古人の骨
熊笹の根や
湿地の羊歯や
落磐や
蛇や
苔や
そして
背を撓め
脇腹を歪め
谷や
山や
切通しや
凝灰岩の風化の泥にまぶれ
蝋髪袈裟の立像レリーフにフラッシュを浴びせ
古墳窟に執心する
僕の頃日
その僕の腹皮をよじる
蜈蚣のような開腹縫合の痕
その周辺を
姦しく通過した
六ヵ月前の
死の足音
それよりも
僕の記憶に
生々しい
北鮮のあのあたり
二重ガラスの列車の窓から
凍った海岸線を切る
白鳥の群や
突然山影に出現した
巨大な工場や
その映像につづく
死のきそい
相模湾を真紅に染める落暉
掌に鳴る
古人の骨
その遠近の視覚の襞に揺曳くする
死の
形
そして
古墳窟の
黴臭に満ちた静謐に佇む
僕の耳に
キャタピラや
プロペラや
電波や
犇き
轟き
無数の
死のきそいが