上海雑草原:第二番

風はヒタと方向を失った
ねじまげる首の届くかぎり
曳光は鱗雲に映え
何と宇宙は美しいことだ
昏れ残る野の半面に
丈の伸び切った草が海草のようにメラメラ漂うている
突然
濁った合唱が湧き立ち
迷彩の屋根が脹らむかと見ると
たちまち撃墜のように
太陽が沈む
地上は茫々たる雑草の影絵
ひょっとすると
その向こうにグランドキャニオンのような断層があって
そこから世界は途切れているんじゃないか
合唱は
懶く
乱れ
草蜉蝣がとんでいる

2024年07月21日|池田克己:上海雑草原