東京:第二番

眞昼間
野犬の群れに喰い殺された子供があった
疾走中の満員電車の扉が開いて数名の乗客の生命が神田川の濁流に
 呑まれた

荒天の初夏
肌に汗重く
焦土の麦の穂は黒くしなびれていた

何かのクラビヤ版で見た
コロラド峡谷や
スコットランドの蛇行河の風景を
記憶の中に蘇らせようと努めるが
胸に悲哀ばかりが激烈だった

2024年07月23日|池田克己:東京