絢爛たる魚
魚は言葉など吐かないが
オーストリヤの海岸にいるというピエルロプテリクスという奴は海藻のようにめらめらのびた皮膚を七色の波間にひるがえしているまるで乱舞する舞姫だ
チョウチンアンコウという奴は亦何て奇態だ 煙管のようなアンテナを額の上にかかげて三千尋の深海で発光している
ベンテンウオやイヌチゴやワカマツの豪華なひれ クサビマンボオやクマドリの目もあやな体紋
全くおどろくことだらけだ
ときどき自分は想うのだ
あいつらこそ人間などよりはるかに進歩した生物ではないかと
絢爛たる肉体衣装はもはや言葉を必要としないのだ
言葉はむかしむかし神にかえし
あいつら 今はあのように自在なのだ と