二つの眼

右の眼に従順な左の眼
左の眼に従順な右の眼
燭をかざして夜を急ぐとき
二つの眼に結ばれる
明暗のたゆたい

 花の紅
 空の青
 断崖に沿う海の白波
 天と地の
 虚無を支えて
 見開く二つの眼

愛あるときは悲しいと言い
股ぐらから顛倒した絶景を覗く
人間の知恵

 思想や
 物質や
 いたるところの勝利や敗北
 来るものに
 去るものに
 瞬く二つの眼

右の眼に従順な左の眼
左の眼に従順な右の眼
耀く太陽に向って
黒と言え
白と言え
二つの眼の所在よ

2025年06月09日|池田克己:二つの眼