池田克己:芥は風に吹かれてゐる例言
一、一九三四年三月、私は東京での四ケ年近い生活を切り上げた。
古里の百日。
青梅を囓る。すっぱくてうまい。
一、昨日の詩は躙られねばならない。
一ケ年間の芥。詩集は芬々と悪臭を放つ。
一、「いまどき詩集を」の思いもある。
口惜しいが煎じつめると自分がいとしいのだ。
蛹が胡蝶にかわる。そのような華々しい生長-変化-は望めまいとしても、自分も亦今日に連なる明日を信ずる一人である。
一、ウイスキーグラスをカリカリ囓り喰い、睜る男共を冷然と一瞥したカフェーの女を自分は知っている。
一、美しい風景、花、金魚、小鳥、しかも尚自分は一個の人間を愛する詩集はその淋しさで一貫される。
一、「風まじり雨ふる夜の雨まじり雪ふる夜はすべもなく・・」
萬葉すでに憶良あるの事実。
くるめき落ち、わだつものーー
一、肉が腐ってだが骨は純白に生きてーー。









